「何者」とシェアハウス(ネタバレ無し)
映画「何者」が公開される。
自分はそれなりに本を読むが、小説「何者」は最近読んだ本で一番心に響いた。
作者は桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)の朝井リョウ
何者のテーマは「就職」と「SNS」と「シェアハウス」だろうか。
一言で言えばまだ何者でもない若者たちの物語だ。
自分は2年くらい大型シェアハウスに住んでいた。
そこは100人住んでいるシェアハウスで、自分は26歳で入居した。
そこには色んな仕事をしている人がいて、同い年がたくさんいて、色んな生き方をしている人がいて。
何者の物語の鍵となるツールの一つにツイッターがあるが、自分が住んでいたシェアハウスも色んなライングループがあった。
何が言いたいかと言うと
「シンクロ率やべえ、、あるあるどころじゃねえぞこれ、、」
ってことです。
この作者は心情を描くのがとてもうまい。
最大のテーマは就職。物語でも夢と現実の狭間で悩む感じがすごいリアル。ツイッターの使い方も、怖いぐらいリアル。
この「何者」は実は直木賞を取ってるんだけど、何かいい意味で直木賞っぽくないなと思った。会話劇だし、スラスラ最後まで読める。
この映画のCMで「青春が終わる、人生が始まる」っていってた。
学生から社会人になる時、僕らは人生がガラッと変わる。
今まで守られていた立場から社会という名の戦場へ出て行く。
昔より学生が無個性だと言われることもあるが、ほとんどの会社が無難な「何者でもない」人間しか採用しないのだから仕方ないと思う。
ただ実際は個性がなくなっているわけはなくて。
今も昔も若い時は皆、個性的に生きたいと思っている。
友達には就職という形ではなく自分の夢を追いかける人もいて、そういう人たちを横目に見てきた経験が誰にでもあるのではないだろうか。
シェアハウスに住んでいても例えばクリエイターだったり投資家だったりダンサーだったり色んな人たちがいて一緒に遊ぶ機会がある。
羨ましくもあったり大変だなと思ったりする。そういう世界は上には上がいて、自分の実力が否応無しにわかる。それを楽しんでいる人もいれば、うまくいかなくて葛藤してる人もいる。
必死に何者かになろうとする若者と、なんとなく何者かになっていく若者。
どちらが素晴らしいと言うことはないが、SNSの登場で否応なしに友達の情報や社会の情報が多くなり、自分を貫くのが難しい時代になっているのかも知れない。
「何者」とは、なにも職業に限った話ではない。
友達や恋人にとって、僕達は何者なのだろう。
そういうことを考えさせられる小説だった。
それは、生きていくうえでとても大事な気がしている。